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国際的腐敗行為防止事件の展開 2018年10月の10大ニュース

Top Ten International Anti-Corruption Developments for October 2018

26 Nov 2018

多忙な社内弁護士やコンプライアンスの専門家に全体像を掴んでいただくため、10月の国際的腐敗行為に関する事件の展開のうち最も重要なものについて、要約と、一次情報源のリンクを提供する。米司法省(DOJ)刑事局は企業犯罪の解決における監視人の設置と選任の方法をどのように変更したか。英国初の不明財産に関する命令を受けたことが判明した者は。経済協力開発機構(OECD)はメキシコの外国公務員を巡る贈収賄に対するエンフォースメントの取組みをどう評価しているか。収賄容疑で中国当局に身柄を拘束された国際法執行機関トップは。その答えはこの2018年10月の10大ニュースの中にある。

 

1. DOJ刑事局、監視に関する指針の改定とコンプライアンス担当官の役職廃止を発表

  • DOJ刑事局、監視について最新の指針を発表 2018年10月12日、DOJ刑事局司法次官補(AAG)のBrian Benczkowski氏が、刑事局の事件に関与した事業組織の監視人の設置と選任に関する新たな覚書(「Benczkowskiメモ」)を発表した。Benczkowskiメモは、監視人選任の基本的な構造など、刑事局が2009年に発行した前回の指針覚書を細かく踏襲するものではあるが、2009年以来刑事局詐欺部が構築してきた一定の実務を明示的に組み入れるとともに、いくつかの重要な点を変更し、明確化した。特に、Benczkowskiメモは、刑事局のFCPAユニットを含む検事らに対し、監視人を置くか否かの判断にあたり、監視人の役割の範囲が「事業運営の不要な負担を回避すべく適切に定められているかどうか」を考慮するよう明確に指図している。監視人が置かれる場合には、解決合意において「監視範囲」の詳細を定めなければならない。近時のクライアントアラートで述べたとおり、このようなBenczkowskiメモの内容は、「スコープクリープ(予期しない要件の肥大)」問題の対処と、監視人選任プロセスの透明性を高めることに役立つ歓迎すべき追加事項である。
  • DOJ刑事局コンプライアンス担当官の交代なし またBenczkowski氏は、2018年10月12日の発言において、刑事局は2017年6月に詐欺部の「単独コンプライアンス担当官」を辞任したHui Chen氏の後任を置かないと発表した。 Benczkowski氏によれば、「この[詐欺部内に単独のコンプライアンス担当官を置くという]アプローチには利点はあったが、刑事局のコンプライアンスに関する専門知識を一訴訟部門の一人に集約することにはそもそも限界がある。」Benczkowski氏は、この役職に就いた者は「必然的かつ就任後すぐに民間セクターから強い引き抜き要請を受ける」という懸念にも言及した。刑事局は、単独コンプライアンス担当官を置く代わりに、詐欺部とマネーロンダリング及び資産回復部(MLARS)の両部における「多角的な採用と的を絞った研修プログラムの開発を通じて」前コンプライアンス担当官の業績の上にその取組みを積み上げていくとBenczkowski氏は述べた。

2. マレーシアのソブリンウエルスファンドのスキャンダル、米馬両国で起訴 この2年間、当事務所では、マレーシアのソブリンウエルスファンド、1Malaysia Development Berhad(1MDB)に関し、当該ファンドが贈賄及び不正流用に関与した疑いについてマレーシア、米国、シンガポール、スイスの各当局が並行して行っている捜査も併せ、その進展を何度も報告してきた。(1MDBの詳細については、2016年7月2016年8月2017年6月2017年12月2018年5月2018年6月及び2018年8月の10大ニュース参照)

  • 1MDBスキーム容疑に関し、米国で3名を訴追 2018年10月3日、DOJは、Taek Jho(別名Jho Low)氏とNg Chong Hwa(別名Roger Ng)氏がFCPAの贈賄防止条項の違反及び1MDBから横領した数十億ドルの資金洗浄で共謀したとしてニューヨーク州東部地区連邦地方裁判所に起訴されたと発表した。Ng氏は、「ニューヨークに本店を置く大手金融機関」(ゴールドマン・サックスだと報じられている)の内部会計統制を巧みに回避したとしてFCPAの会計処理条項違反についても起訴された。同時にDOJは、元銀行役員のTim Leissner氏が関連するマネーロンダリング並びにFCPA上の贈賄防止及び会計条項の違反について有罪答弁を行い、4,400万ドル近い金額の没収に同意したと発表した。(マレーシア当局は関連する罪で2018年8月にLow氏を起訴している。)最近公開された起訴状(こちらこちらで閲覧可能)によれば、被告人3名は、1MDBに対する債券引受額60億ドルから10億ドル超を転用し、その資金を、この被告人ら個人と1MDBの役人が実質的に所有・管理していた口座を通じて洗浄した。これらの資金は、高級不動産投資、オークションでのアート購入及び『ウルフ・オブ・ウォールストリート』などハリウッド主要映画への出資に利用された。被告人3名は、上記金融機関に収益をもたらすビジネス(債券取引2件を含む)を獲得し、これを保持するためにマレーシアとアブダビの両国の公務員に贈賄を行ったとも言われている。
  • マレーシアで首相などを新たに起訴 2018年10月4日、前マレーシア首相のNajib Razak氏の妻Rosmah Mansor夫人は、1MDB捜査に関連して、マネーロンダリングと脱税を含む17件の罪でマレーシアにおいて起訴された。「検察当局によれば、マレーシアのイメルダ・マルコス」と呼ばれるRosmah夫人はマネーロンダリング取引に直接携わった。2018年10月25日、Najib氏と元マレシア財務省事務次官のMohd Irwan Serigar Abdullah氏は、それぞれ、約16億ドルの政府資金[の不正流用]が絡む背任罪の訴因6件について起訴された。検察当局によると、不正流用された資金は、クアラルンプールの空港と現金援助プログラムに充てることが予定されていた。Najib氏は2018年の7月と8月にも背任、汚職及びマネーロンダリングの罪の複数訴因についても起訴されており、今回が3度目となる。被告人3名全員が無罪を主張している。

3. アメリカとハイチの二重国籍者、ハイチ港湾プロジェクトスキームにおけるFCPA違反につき訴追 2018年10月30日、DOJは、FCPA、旅行法及びマネーロンダリング関連法令の違反で共謀した罪及び旅行法違反の罪で、Roger Richard Boncy氏をマサチューセッツ地区連邦地方裁判所に起訴したと発表した。これらは、ハイチの8,400万ドル規模の港湾開発プロジェクトの承認を得るため、ハイチの公務員に対して贈賄を行うスキームに関与した疑いに関するものである。Boncy氏の共謀者とされているJoseph Baptiste氏は、優先起訴状において同じ罪について起訴されている。Baptiste 氏は、2017年10月に同じスキームについて訴追されており、裁判が2018年12月3日に開始される予定である。DOJのプレスリリースによれば、Boncy氏とBaptiste氏は港湾開発プロジェクトへの出資者を装った潜入捜査官との会合中に、Baptiste氏がメリーランド州を本拠として設立した非営利団体を通じてハイチの貧困住民の援助を装った資金洗浄を行うことを計画していると説明したとされている。 また、通信傍受を通じ、この2人がプロジェクトの承認と引換えにハイチの上級公務員の補佐官に対して贈賄を行うことについて話していたことが判明した。2017年8月のBaptiste氏逮捕の際にも触れたとおり、この事件は、DOJがFCPA違反の捜査や訴追のために、潜入捜査官や通信傍受など法執行にかかる幅広い戦術を取り続けることを証明している。

4. PDVSA関連の判決言渡し及び有罪判決 2018年10月、ベネズエラの国有石油会社Petróleosde Venezuela S.A.(PDVSA)での贈賄および横領の容疑に関するDOJの大規模捜査で、被告の1名が判決を言い渡され、2名が有罪答弁を行った。

  • 元銀行役員に10年の禁固刑 2018年10月29日、DOJは、Julius Baer銀行の元マネージングディレクター兼副会長Matthias Krull氏が、PDVSAから横領した12億ドルの資金洗浄スキームに関与した罪でフロリダ州南部地区連邦地方裁判所で120カ月の禁錮刑の判決言い渡しを受けたと発表した。Krull氏はまた、罰金50,000ドルと$60万ドルの金銭没収判決を命じられた。ドイツ国籍でパナマ在住のKrull氏は、2018年7月に逮捕され、2018年8月にマネーロンダリングにおける共謀罪の訴因1件について有罪答弁を行った。問題の資金については、世界中の資金運用会社、証券会社、銀行及び不動産投資会社の精巧なネットワークを通じてマネーロンダリングが行われたとされている。
  • PDVSA財務計画担当エグゼクティブ・ディレクター、有罪を認める 2018年10月31日、DOJは、Abraham Edgardo Ortega氏がフロリダ州南部地区連邦地方裁判所においてマネーロンダリングにおける共謀罪の訴因1件について有罪答弁したと発表した。DOJによれば、Ortega氏はフランス企業とロシアの銀行(共にPDVSAの合弁会社の少数株主)に対し優先ローンのステータスを与える見返りに500万ドル、またローンと為替予約に絡む横領スキームへの関与に対して1,200万ドルを収賄した。判決言渡しは2019年1月9日に予定されている。
  • PDVSA調達担当役員、有罪を認める 2018年10月30日、DOJは、Alexis Guedez氏がテキサス州南部地区連邦地方裁判所においてマネーロンダリングにおける共謀罪の訴因1件について有罪答弁したと発表した。DOJによれば、Guedez氏は賄賂を受けてマイアミの供給業者に取引を受注させ、偽の請求書とスイスの銀行に開設したペーパーカンパニー名義の口座により支払金を隠蔽した。Guedez氏は、この事件の捜査で有罪となる15人目の被告人で、2019年2月20日の判決言渡しが予定されている。

5. 英国初の「不明財産に関する命令」を受けた者の身元が判明 2017年犯罪財政法(Criminal Finances Act 2017)(2018年1月施行)により、「不明財産に関する命令(unexplained wealth orders(UWO))」の制度が英国に導入された。当時のクライアントアラートで述べたとおり、重要な公的地位を有する者(politically exposed person(PEP))が50,000ポンドを超える財産を違法に取得したと疑われる場合、英国規制当局は、対象財産の取得経緯に関する説明を当該容疑者に義務付けるUWOの発令を求めることができるようになった。2018年10月10日、英国で初めて適用されたUWOの報道制限期間が終了し、対象者Zamira Hajiyeva氏の身元が判明した。Hajiyeva夫人は、横領、職権乱用及び詐欺で有罪判決を受けて現在バクーにおいて15年の禁固刑で服役中のアゼルバイジャン国際銀行の元会長Jahangir Hajiyeva氏の妻である。Hajiyeva夫人は、不動産3件とゴルフコースを購入し、10年間に英国高級百貨店ハロッズで1,600万ポンドもの買い物をしたとされている。UWOにより不正行為疑惑が生じているため、Hajiyeva夫人は英国家犯罪対策庁(National Crime Agency)に対し、費やした資金が合法的なものであることを証明する必要がある。それができない場合は、2002年犯罪収益法(Proceeds of Crime Act 2002)に基づき財産回復命令が当該資産に適用される。近時のクライアントアラートで解説したとおり、UWOが制度としての導入から程なくして実際に適用されたことは、英規制当局が今後これを益々頻繁に適用する可能性を示唆する。

6. SFO、ウズベキスタンの汚職取引によるものとされる収益の回復を追求 2018年10月3日、英国重大不正捜査局(SFO)は、2002年犯罪収益法第5部に基づき、英高等法院において民事賠償請求を行ったことを発表した。この請求には、英国の不動産3件を含む複数の資産が関係している。SFOによれば、同不動産は、Gulnara Karimova氏及びRustam Madumarov氏が関与したウズベキスタンでの汚職取引から得た収益により取得されたとされるものである。本件で、Islam Karimov元ウズベキスタン大統領の娘Gulnara Karimova氏は、ウズベキスタンの通信市場への参入・事業継続に手を貸す見返りに、スウェーデンオランダの通信会社から何億ドルもの賄賂を受け取ったとされている。報道によれば、Madumarov氏は、Gulnara Karimova氏の恋人で、ペーパーカンパニーを通じてロンドンの1,700万ポンド超の高級不動産を購入した。SFOは、指示に関する審理(directions hearing)が間もなく公表されるとしている。

7. OECD、メキシコ政府当局の外国公務員を巡る贈収賄に対するエンフォースメントの成果を批判 2018年10月19日、OECD賄賂作業部会(Working Group on Bribery)が、国際商取引における外国公務員に対する贈賄の防止に関する条約(Convention on Combating Bribery of Foreign Public Officials in International Business Transactions)(「外国公務員贈賄防止条約」)のメキシコ政府当局による実施について第4フェーズ審査を発表した。作業部会は、メキシコ政府当局が外国公務員の汚職に関連する事件の起訴に1件も成功していないことを引き合いに出して、同政府当局は外国公務員を巡る贈収賄に対するエンフォースメントをなお一層優先すべきであるとした。作業部会は次のようなコメントを出している。「とりわけメキシコ経済が輸出主導型であることを考えれば、また、メキシコの輸出経済には、エキス、工業製品、農産物など、汚職リスクが高いセクターが関わっていることから、これは重大な懸念の種である。」作業部会は更に、メキシコ政府は、全国腐敗行為防止制度(National Anti-Corruption System、これを施行するための法律の施行日は2016年7月)の下、外国公務員贈賄防止条約の実施を強化し得るとしている。なかでも、作業部会は、メキシコ政府に対し、特別贈賄防止検事(Special Anti-Corruption Prosecutor)の指名、行政司法連邦裁判所(Federal Court of Administrative Justice)の判事の任命、新たな憲法の仕組みに基づく検事総長(Attorney General)の任命、及び新たな贈賄防止手続(Anti-Bribery Protocol)の実施を「至急」行うべきであると勧告した。他方、より肯定的な側面として、作業部会は、外国公務員贈賄防止条約に従って外国腐敗行為規制を修正し、法人の刑事責任の枠組みに承継人の責任を導入したとして、メキシコ政府を評価している。

8. 中国政府、収賄容疑捜査でインターポール総裁の身柄を拘束 2018年10月5日、国際刑事警察機構(International Police Agency(インターポール))の孟宏偉(メン・ホンウェイ)総裁が、9月下旬に中国に帰国した後行方不明になったと報じられた。2018年10月7日午前0時(中国時間)直前に、中国共産党中央規律検査委員会(Central Commission for Discipline Inspection(CCDI))と、新設された国家監察委員会(National Supervisory Commission (NSC))は、共同ウェブサイトにおいて、孟氏の身柄拘束を認める次のたった1文の>声明を発表した。「公安省次官の孟氏は、現在、違法行為の容疑で国家監察委員会の捜査対象となっている。」(NSCについての詳細は当事務所の2018年3月の10大ニュース参照)その数時間後、公安省党幹部は「夜が明ける前に」会議を行い、公式ウェブサイトにおいて、孟氏による「違法行為」は「収賄」容疑であるとする声明を表明した。インターポールの発表によれば、孟氏は身柄拘束後「即時」辞任し、孟氏の残りの任期2年間総裁を務める新総裁は2018年11月半ばに選出される予定である。孟氏は、中国で過去数年間に注目を集めた多くの身柄拘束者のひとりに過ぎないが、今回の事件は、国際法のエンフォースメントへの協力推進におけるインターポールの役割に照らし、世界規模の汚職防止の観点から特に重要である。

9. 中国の新刑事訴訟法、汚職事件について欠席裁判を規定 2018年4月、中国国営通信は、中国政府が、政治家が横領して中国外に持ち出した国家資金の中国への返還を促進するため、欠席判決の導入を計画していると発表した。2018年10月26日、中国全国人民代表大会は、国際刑事司法共助法(「司法共助法」)を可決した。新法である司法共助法は、汚職や贈収賄をはじめとする組織犯罪と闘うため、国境を越えた連携の強化を目的としており、1979年中国刑事訴訟法の第3回改正の一環として起草された。同法の規定の主な特徴は、汚職及び国家安全保障に関する事件にのみ適用される新たな手続きである欠席裁判(trial in absentia)(改正刑事訴訟法第3章第5条)が認められている点である。当該裁判では、国際訴訟扶助等の適正な手段を通じて被告人に召喚状が送達された後、欠席裁判が認められている。

10. 国連、腐敗行為を巡る状況の測定方法に関するマニュアルを公表 2018年10月24日、国連薬物犯罪事務局(UN Office on Drugs and Crime)及び国連開発計画(UN Development Program)は、「腐敗行為調査マニュアル(Manual on Corruption Surveys)」を発行したことを発表した。同マニュアルは、腐敗行為防止に関する信頼できるデータの収集を促進し、腐敗行為防止の取組みの進展状況を測ることを目的とするものである。発表によれば、「国連腐敗防止条約(UNCAC)の実施状況審査手順(Mechanism for the Review of Implementation of the United Nations Convention against Corruption)」を通じて行われる査読全般において、腐敗防止に関する統計データの欠如は間隙と認識されている。上記マニュアルは、国家レベルで贈収賄の蔓延状況を測定するため、また、腐敗に関するその他の関連情報を収集するため、母集団と企業の双方を対象とした標本調査の開発・実施のための方法・運用ガイドラインを各国に提供することにより、この間隙を埋めようとしている。当該マニュアルの方法論が各国で採用され、その結果が公表されれば、ビジネスを展開する国における腐敗リスクを評価・緩和しようとしている企業にとって新たなデータ要素が創出される可能性がある。

モリソン・フォースター、ロンドン・オフィスのソリシター」研修生Christopher James Lloydが本アラートに寄稿。

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